作品紹介

昇らぬ朝日のあるものを〜幻のオリンピアン〜

歴史物語戦争と平和生き方・人生愛と友情

大事なのは成功することではなく・・・
幻と消えた戦前のオリンピックを巡る物語

作品紹介

オリンピックとは、一体何なのだろう。確かにそこには、世界中で大切にしてきた何かがある。例えば「なぜ自分はスポーツをするのか?」というオリンピアン達の言葉の中にある、ライバル達への敬意と、フェアに競い合うことの喜び。それらを心からの自分の言葉として獲得する為には、教育は必須であり、それは平和教育に他ならない。あるいは「人生にとって大切なことは、成功することより努力すること」という理念・・・1938年、かつて日中戦争の影響で返上した幻の東京大会を振り返る時、それらはむしろ際立つ気がする。
「東京2020」を迎えるにあたり、新型コロナや原発・経済をはじめとする様々な問題を抱え、ギリギリまで開催の是非に揺れたが、まずは、理想の「オリンピック」をこそ思い、若い人達の未来をこそ思い、「平和への祈り」に向けて、敢えて「一つになろう」と言いたい。まがりなりにも、世界に向かって「どうぞおいで下さい」と言えるとしたら、それは素朴に嬉しいことだったはずだから。

あらすじ

かつて東京には幻と消えたオリンピックがあった・・・
舞台は、アジアで初めてオリンピックが開かれると決まった東京、沸き上がる興奮が一段落落ち着いた頃。選手として将来を嘱望されながら、酒が原因で居場所をなくした男。ケガに泣き、オリンピックを諦めようとする男。オリンピックで一旗揚げようとする男。信義のためにオリンピック開催そのものを諦める男。そして彼らを取り巻く女たち・・・オリンピックを縁として男と女が引き寄せられていく。
それぞれがオリンピックを目指すことで、人生を取り戻そうとするのだが、やがて・・・

作品鑑賞のポイント

★美しい舞台で、お芝居と同時に鮮烈な映像も・・・
物語と並行して、映像により、当時の歴史的事実も知ることができる斬新な演出でおおくりします。
★普遍的なテーマ
戦争と平和、人種による差別と偏見、挫折と希望・・・この物語には、単なる時事問題だけではない深いテーマがあります。

<作品情報>
・作/村田里絵
・演出/平塚仁郎
・上演時間/約115分(休憩なし)
・対象/中学生・高校生・一般

皆さまからの感想

オリンピックが開かれなくなってしまったこと、戦争があったこと、必死で追いかけた夢を諦めざるを得なかった人がいたこと、それらはすべて事実で、私たちが忘れてはいけないことだと思いました。これからは2020年の東京オリンピックに向けて、今まで通り、ただ見て応援するだけでなく、過去にあったことや頑張っていた人たちの想いを考えながら、全力で応援したいと思いました。

I高等学校3年生女子生徒

劇中で出てきたスクリーンで、戦争中の日本に対してアメリカが「行政はスポーツと別物」と日本での開催に賛成したのは、僕自身その精神に心から尊敬しました。そのように世界中の人々の認識が変われば、きっと何かいい方向へ世界も変わっていくのではないでしょうか。

N高等学校2年生男子生徒

高校の劇によくあるのが、受け手に想像させるという所なのですが、今回の劇は、舞台装置などがとても凝っていてかなり観応えがあり、また見ている人が今どの場面なのかがわかりやすい劇でとてもすごいなと思いました。

I高等学校1年生男子生徒

人は目標があるからこそ、そこに向けて努力して行くことができるんだなと、今回見てそう思いました。また、結果だけをよく見がちだけど、本当に大切なのはそこまでの行動なんだろうなと思いました。そしてこれは、今回の物語だけにかかわらず普段の生活でも当てはまると思います。だから私も目標をしっかりと持ち、結果だけでなくそこまでの行動も大切にしていきたいです。

I高等学校1年生女子生徒

一度は諦めてしまった人に、もう一度やってみようと思える心を与えるほどオリンピックは素晴らしいものだと思いました。オリンピックを通して、一人ひとりそれぞれの舞台で努力し、成功だけではない何かを手に入れ、それが報われるような世界になっていってほしいと思いました。

T高等学校2年生女子生徒

今日、この舞台を観る中で、戦争のことを忘れてはいけないと改めて感じました。戦争は、人の命だけでなく、生活、そしてスポーツの祭典であるオリンピックという世界的な一大イベントでさえも奪ってしまった。
今年で戦後74年。時間が経過すると共に、戦後の斬撃は人々の記憶から消え、あっと言う間に無くなってしまいます。それをくい止めるためには、戦争を知らない私たちが戦争について知ることが必要です。そして次の世代に語りついで行かなければなりません。これから絶対に戦争が起こらないとは限りませんが、そうであってほしいと強く願っています。だから、平和に生きられることへの感謝を忘れず、決して戦争を忘れることなく、過ごしていきたいです。

T高等学校2年生男子生徒

1930年代の日中戦争前に、オリンピックが東京で検討されていることは全く知りませんでした。まさに幻のオリンピックには戦争を背景にした少し悲しいドラマがあることを知りました。特に「シゲさん」と呼ばれていた人の挫折からはい上がっていく姿にとても感動しました。
 また劇を見ていると1930年代の日本には鉄があまり使えない理由も見えてきました。国家総動員法と呼ばれる法は中学の歴史で知っていたけど、鉄の使用に制限があるとは知らなかったので、ある意味歴史の勉強にもなりました。
 この幻のオリンピックがなぜ行われなかったのか、それは劇中で何度も出ていた「平和」というものがあの時代にはなかったから。今、色々な国でオリンピックが開かれるのには、平和がずっと続いていることと同じなんだと分かりました。来年のオリンピックでは幻のオリンピックを意識して観戦したいです。

N高等学校3年生男子生徒

この舞台は、一波乱は起きるものの、きっとハッピーエンドで終わるのだろうと思っていました。しかし、戦争が激しさを増したことでオリンピック開催は断念され、男たちの夢は破れ、物語は悲しさを残しながら終わりました。大川さんは、オリンピックに唯一の希望を持ち、酒を止め、日々の練習に励み続けていました。にもかかわらずオリンピックは中断され、希望を失い、最後には頑張って止めていた酒で命を落としてしまい、報われることのなかった努力やもしオリンピックで走ることができていれば思うと涙なしでは観ることができませんでした。佐藤さんも同じです。最後の出兵していく場面は本当に胸が痛かったです。
 私は2020年に東京で開催されるオリンピックにあまり興味がありませんでした。それはきっと、オリンピック自体を平和に、当たり前のように開催できるものと錯覚していたからです。しかし、今回の舞台を鑑賞し、その考えは改めなければならないと痛感しました。そして東京オリンピックでは、開催されることのなかったこの幻のオリンピックがあることを忘れずに選手の皆さんを応援していきます。

T高等学校3年生女子生徒

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